焼き杉板について ~種類や特徴を解説~

焼き杉

木目の不均一性が飾らない味となり、その黒色の中に奥ゆかしさがある焼杉板。街なかに見かける焼杉板の外壁の住宅からはどこか日本らしさを感じます。そんな焼杉板の特徴について解説します。

 

目次

焼杉板とは

焼杉板とは、杉板の表面を焼き、炭化させた板のことで主に外壁材として使用されます。昔から主に西日本で伝統的に使われてきた外壁材です。東日本では比較的歴史が浅いみたいです。

 

焼杉板の特徴

焼杉板には他の種類の外壁材にはない特徴があります。性能面と意匠面から特徴を紹介します。

 

炭化層による耐久性の向上

焼杉板は杉板の表面を焼いて炭化層をつくります。炭化とは簡単にいうと熱されることによって有機物質が分解され、炭素を含むようになることです。そしてその炭化作用は、杉板の耐候性や耐久性を向上させます。

また、調湿作用もあり水分をよく吸収します。そしてさらに防虫、防腐効果もあり耐久性の良い素材です。

まるで塗料を塗っているかのような効果がありますね。…塗料のなかった時代の先人たちの知恵には感心させられます。

 

落ち着きのある有機的な意匠性

焼杉の魅力の一つとして、不均一で有機的な意匠性と、落ち着きのある色合いがあります。焼杉板の外壁をみると、どこか日本らしさが感じられます。

色や素材自体に特徴があるのではなく、素材一つ一つの持つ個性が柔らかさに特徴があり木造の建築との親和性が高いところからでしょうか?

またモダンな建築物にも合う質素な雰囲気が良いですね。

 

サイディングと比べて軽量

窯業系サイディングなどと比べて軽量であるため、容易に持ち運びできる他、重量のある外壁材と比べて建物への負担を減らすことができます。またその軽さから地震の際に建物へ掛かる負荷も低減されるため、地震に強い材料と言えることができます。

 

施工性

焼杉板の一部張り替えや上塗りなどが行えるため、施工性もあります。サイディング材は、張替え時となったときにその品番が廃盤になっていることがありますが、焼杉板はそういった心配をする必要がありません。

もちろん、古い焼板と新しい焼板が横に並ぶと色合いに違いが生まれますが、自然素材であることから張替えた跡がまた味となります。

 

触ると汚れる

焼杉板は触ると汚れます。そのため服が汚れてしまったりする可能性があります。お気に入りの服を汚さないように注意しなければいけません。

しかし、それも焼杉板の魅力のひとつです。汚れるなら触らないようにすれば良いし、それを上回る効果があるのが焼杉板です。というより他の外壁材も触れば汚れます。

服が汚れることを気にする前に、外壁を傷つけないように丁寧に扱うことを意識しましょう。

 

反れや割れが起こる

サイディングとは違い、木でできている自然素材ですので経年変化でどうしても反れや割れがでてきてしまいます。

とはいえ、サイディングを使っていたとしても下地の胴縁などは木でできていますので、下地材のことも考えると、そう変わらないような気がします。

 

焼き方の種類

三角焼き(手焼き)

昔ながらの伝統的な焼き方です。杉板を3枚三角になるように束ねて、中に鉋屑を入れて焼きます。板の中の方まで焼けて炭化層が炭化層が厚くなるため、その炭化層の厚みの分だけ高寿命です。

 

バーナー焼き

バーナーで炙るように杉板を焼いて炭化層をつくります。バーナーで焼く場合は中まで焼くのが難しいため炭化層が浅くなり炭化作用の効果が長く持たないという特徴があります。三角焼きと比べると手軽に施工できます。

 

仕上げの種類

素焼き(焼きっぱなし)

焼いたままの焼杉板のことです。ブラシをかけたものと比べて炭化層が厚いので、より炭化作用の効果を発揮することができます。

 

ブラシ仕上げ(磨き)

素焼きの焼杉をブラシで磨いて炭を落としたものです。素焼きと比べると炭化層は浅くなりますが洗練されたような細やかさがでます。

 

塗装仕上げ

焼板をブラシで磨いて炭を落としたあと、塗装で仕上げます。塗装が炭化層を保護するため、ブラシ仕上げより炭化作用を長く保つことができます。

 

浮造り仕上げ

杉板の年輪を活かした仕上げです。年輪は木目とも言われており、木目は早材と晩材に分かれます。早材とは、年輪の中で薄く幅の広い部分のことで、その幅が春の成長スピードを表しています。その後夏から秋にかけて木材は成長が遅くなりその部分が、色の濃く幅の狭い晩材となり木目に現れます。早材は柔らかく、晩材は硬いという特徴があります。

素焼きの焼板の早材部分をブラシで削ることにより、晩材の木目を際立たせたものが浮造り仕上げといいます。見た目からも凹凸が感じられ、奥ゆかしさと木目の美しさが際立ちます。

 

焼杉板の張り方(縦張りと横張り)

焼杉板の張り方もいろいろありますが、今回は縦張り、横張りについて紹介します。

縦張り

焼板を立て方向に張り並べていく張り方です。

縦張りは建物をよりシャープに演出します。

施工的には、胴縁が横方向となり通気が取りにくいため、工夫が必要です。

横張りに比べて水キレが良いです。

 

横張り

焼板を横方向に張り並べていく張り方です。

横張りは土地に対してどっしりと構えるような安定感を出してくれます。

 

まとめ

外壁材の中でもその意匠性で目を引くことのおおい焼杉板ですが、昔から西日本で伝統的に使われていた理由である炭化作用はこれからの時代にも役に立つものであると思います。

焼杉板には課題も多くありますが、他の外壁材に劣らない性能を持っていることに加えて、その有機的な木目が奥ゆかくあたたかな暮らしを彩ってくれるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

現場監督クロと、住宅設計士シロの建築士コンビが運営。


”住宅の間取りと照明”
についての知識・情報を発信中。

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